イランの深刻な環境危機が経済全体を蝕んでいる。水不足、大気汚染、砂漠化の急速な進行により、食糧生産やエネルギー産業まで大きな打撃を受けている状況だ。
環境悪化がもたらす経済的損失
ペルシア湾岸に位置するイランは、かつての豊かな水資源に支えられた農業国だった。しかし過去数十年の過度な地下水採掘とダム建設により、かつての湿地帯の大半が消滅し、湖沼の水位が急低下している。カスピ海周辺地域でも塩害が深刻化し、農業生産性の低下は食糧価格の上昇に直結している。経済学者の試算によれば、環境問題による年間の経済損失はGDPの5~8パーセント程度に達するとみられている。
テヘランやイスファハンなど主要都市の大気汚染も深刻で、呼吸器疾患による医療費増加と労働生産性の低下が続いている。石油産業への過度な依存がエネルギー政策の転換を遅らせた背景もある。
国際制裁との複合効果
イランが直面する経済危機は環境問題だけでは説明できない。米国による経済制裁により、外国投資が激減し、技術導入も困難になっている。環境技術の獲得さえ国際的な規制に妨げられているのが現状だ。国内産業の競争力低下と相まって、失業率は上昇し、特に若年層の経済的困窮が深刻化している。
政府は水資源の効率化や再生可能エネルギーへの転換を掲げているが、制裁下では必要な資金と技術が不足している。環境復興と経済再生の両立は、イランにとって極めて難しい課題となっているのだ。
地域への波及と国際的課題
隣接するイラクやアフガニスタンも水不足と砂漠化で苦しんでおり、イラン発の環境危機が中東全体の不安定化につながる懸念もある。国連環境計画も警告を発しており、地域の水資源をめぐる国際紛争の可能性は否定できない。
イランが環境と経済の危機から脱するには、国際社会との協力が不可欠であり、この問題の解決は中東地域全体の安定性にも関わってくる。
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