イスラエル当局が、イランのスパイ活動からハレディ(超正統派ユダヤ教)コミュニティを守るため、ラビ(宗教指導者)やソーシャルメディア・インフルエンサーらを動員した警告キャンペーンを展開していることが明らかになりました。イスラエル国内の安全保障上の脅威が深刻化する中、宗教指導者と現代的な情報発信手段を組み合わせた新しい対策が実施されているとされます。
ハレディ・コミュニティを標的とする諜報活動
イスラエル情報機関は、イランがハレディ層を特に標的としたスパイ活動を行っているとみられています。経済的困窮や社会的疎外感を抱く一部のハレディ男性が、外国の諜報機関に利用される可能性があるためです。イランの革命防衛隊はこれまで、イスラエル国内の治安情報や軍事施設に関する情報を収集する目的で、複数の人物を勧誘してきた形跡があります。ハレディ・コミュニティは伝統的にイスラエル社会から一定の距離を保ち、独自の教育制度と社会構造を持つため、国家機関による浸透が難しく、逆に外部工作員にとっては隙間となりやすい特性があるとも指摘されています。
宗教と情報発信の融合戦略
当局が採用している対策は、従来の公安活動を大きく超えるものです。地域で影響力を持つラビに対し、信者に対してスパイ勧誘への警戒を呼びかけるよう依頼するとともに、若年層に人気のインフルエンサーを通じた啓発活動も進めています。宗教指導者の言葉はハレディ社会において極めて重要な説得力を持つため、セキュリティメッセージもより受け入れやすくなるとの計算があるとされます。同時にデジタルプラットフォームを活用することで、伝統的なコミュニティ内での通知手段では届かない層にもアクセスする狙いがあるとみられます。
宗教コミュニティ内の分裂懸念
一部のハレディ指導者からは、当局の対策に対する慎重な見方も出ています。政府とハレディ・コミュニティの関係は兵役義務の問題をめぐって歴史的に対立してきたため、当局の呼びかけが必ずしも無条件に受け入れられるとは限りません。むしろこうした外部からの介入が、コミュニティ内の統一性をさらに損なわせる可能性も指摘されています。イスラエルは国家安全保障とマイノリティ・コミュニティとの信頼関係の間で、微妙なバランスを求められており、現在の戦略がどの程度効果的かは今後の検証が必要とされています。

